男の肖像2身体美学講座 Fhysical Aesthetics

ムハメド・アリ

全盛期の肖像

2014年10月10日

米国を代表するボクサーの一人。
無敵というより個性とドラマ性が際立っていた。
伝説的なドラマに彩られ、記録より記憶に残る選手。
彼もまた時代が生んだヒーローだ。

アマ時代、五輪で金メダルを獲得する。
自分は米国のヒーローになった、はずと彼は考えた。
帰国後確認すべく一流レストランに足を踏み入れた。
結果は無惨にも入店を拒否される。

変わらぬ差別に栄光から一転、失意のどん底に落ちる。
怒りのあまりメダルを橋から川に投げ捨ててしまう。
(実は単なる紛失、捨てていない説もある。)
この体験はその後の人生に大きな影響を与える。

その後プロに転向、順調に成長していく。
頭角を現すにつれて、個性も際立っていく。
誇大妄想のような大言壮語を吐き、相手を口汚く罵る。
紳士にはほど遠い無作法で、くそ生意気な新人だった。

しかしその大言壮語を実現してしまう。
下の画像は上が彼の伝説の始まり、その下が頂点の画像。

上は当時絶対王者だったソニー・リストンに挑戦した試合。
下馬評は実績の乏しい新人のアリに勝ち目はないが大勢。
結果は画像のとおり、予想を見事に覆して圧勝。
倒れたリストンに毒づくアリの歴史的象徴的場面。

リストン戦 フォアマン戦

下はリストン戦以上に勝ち目がないと思われた試合。
だが再び奇跡を起こし勝利。アリ最大の伝説となる。
奇跡的なことから「キンシャサの奇跡」と言われる。

彼はローマ五輪のライトヘビー級金メダリスト。
次の東京五輪ヘビー級は米国黒人ジョー・フレージャー。
ジョーもまたプロ転向して快進撃を続ける。

その頃アリは兵役拒否をして王座を剥奪されてしまう。
彼がリング外で国と戦っている間に、ジョーが無敵の王者に。
三年余のブランクの後、リング復帰を果たし挑戦権を得る。
ジョーとの無敗同士の世紀の対決となる。
結果は絶頂期のジョーにダウンを喫し、判定負け。

王座は遠いものとなる。
その頃メキシコ五輪の金メダリストがプロ転向。
前二回大会のメダリスト同様、破竹の快進撃。
同じ米国の黒人ジョージ・フォアマンだ。

やがてフォアマンが無敵のジョーに挑戦。
これまた無敗同士、だが相手が新鋭なので世紀の冠つかず。
されど結果は衝撃的、無敵のジョーがなす術なく玉砕。
フォアマンの圧倒的パワーにねじ伏せられた。

一方アリはケン・ノートンに二度目の敗北を喫する。
ノートンは強豪なれど大きな実績はなかった。
その後再戦、再々戦して両方勝利、二勝一敗となる。
だが両方明白な優勢点はなく、名前で勝ったともいわれる。
ノートンは実質的には一度も負けていないと言える。

アリの天敵ノートンは、フォアマンに挑戦することになる。
結果はフレージャー同様、王者のパワーにねじ伏せられる。
アリを苦しめた実力もまったく通じず、二R持たなかった。

アリに勝ったジョーもノートンもフォアマンに歯が立たず。
一方アリは年齢的にもピークを過ぎた印象を拭えない。
にも拘らずフォアマンに挑戦することになる。
誰もが王者のパワーにねじ伏せられると想像した。
それを覆したのが「キンシャサの奇跡」だ。

巧みな戦略戦術で王者のパワーを空回りさせる。
王者は強打が通じない焦りから無謀な大振りを重ねる。
やがて疲労困憊して、足がもつれるようになる。
そこに一撃を食らってキャンバスに倒れ込む。
敗因はパンチのダメージよりスタミナ切れの印象が強い。

フォアマンにもっと戦略があれば、違う結果もありえた。
強すぎたが故の過信で、墓穴を掘ったのかも知れない。
その怪物の心の隙を見逃さず突いたのがアリの戦略。
怪物退治ができた千両役者はアリだけだったと言える。

何はともあれ奇跡の王座復活でアリ伝説も復活。
その後は防衛を重ねる。ただ以後の輝きは普通。
試合内容はフレージャーやフォアマンほどスリリングでない。

つまりアリはけっして無敵のボクサーではない。
だが奇跡的なドラマを実現するカリスマ性があった。
戦術の革命も起こしている。
ヘビー級にスピーディなアウトボクシングを持ち込んだ。
裏目に出ると凡戦の原因にもなったが。

その華麗なスタイルもやがて衰え、最後は無惨なTKO負け。
しかし彼の名声は不滅、正真正銘米国のヒーローとして。